戸川純・スキュラ説

前にちらっと話題に出した戸川純
あくまで個人的考察にすぎないんだけど…
ギリシャ神話の怪物・スキュラ(上半身は美しい乙女、下半身は6頭の犬)のイメージと重なってしかたない。

まず、スキュラとは。

スキュラは元は美しい水のニンフだった。
海神グラウコスが彼女に惚れ、果敢にアタックするが、一向になびかない。
思い余ってグラウコスは、友人で魔女のキルケーに惚れ薬の依頼をする。
だが、キルケーもまた、グラウコスに恋をしてしまう。
「振り向いてくれない女よりも、自分を愛してくれる人を愛すべきだ」と
キルケーはグラウコスを説得するが、聞く耳を持たない。
そこで、恨みの矛先を恋敵スキュラに向けることにした。
スキュラお気に入りの水浴の泉に毒を流したのだ。
ある日、スキュラがいつもの場所で水浴をしていると、恐ろしい姿の犬が何頭も
自分の腰の周りにまとわり付いている。手でふり払おうとも、どんなに逃げても
犬たちは離れない。それもそのはず、彼らはスキュラの変わり果てた下半身だったからだ。

で、スキュラについてとうとうと語ってしまったところで、戸川純の話。
彼女の歌には、ヒト部分で語られる声(言葉)と、犬部分で語られる声(言葉)とがある。
そして、犬部分がヒト部分の口を借りて語っている歌もある。犬優勢かも。

「人や自分/物に対し/抑えきれぬ/破壊衝動」(あたしもうぢき駄目になる/YAPOOSより)

2句目まではなんとかヒトで歌っているけれど、「抑えきれぬ」あたりで他の首たちが叫びだしている。